
太陽光発電の導入を検討している方にとって「今は売電価格が安いから損なのでは?」という疑問はつきものです。しかし、今後の政策や市場の動向によっては、売電価格が見直される可能性があります。そこで本記事では、現在の売電価格の状況と、これからの売電価格がどう変わっていくのかについて、わかりやすく解説していきます。
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2025年度の売電価格を確認!今の相場とその背景とは?
太陽光発電を導入する際に気になるのが「売電価格」です。年々下がっているといわれる中、2025年度は実際にどの程度の価格で電力を売れるのでしょうか。
まずは現在の価格を正確に把握し、太陽光発電の採算性について考えるための第一歩として、現状を整理してみましょう。
過去と比べてどう変わった?売電価格の今
太陽光発電の売電価格は、制度開始当初と比べて大きく下がっています。たとえば、2012年に始まったFIT制度では、10kW未満の住宅用太陽光発電の買取価格は42円/kWhと高額で、設備投資の回収も比較的容易でした。
しかしその後、太陽光パネルの普及と発電コストの低下により、売電価格は年々引き下げられてきたのです。
2025年度現在、同じく10kW未満では15円/kWhと、10年以上でおよそ3分の1にまで減少しています。これは、再エネ導入のコスト負担の公平性や市場価格とのバランスを考慮した結果といえます。
つまり、太陽光発電による売電は「高く売る時代」から「効率的に使う時代」へと移行しているともいえるでしょう。とはいえ、導入前に現在の単価を把握しておくことは、損得を冷静に見極めるうえでとても重要です。
2025年度の売電単価の水準
2025年度に適用されている売電価格は、発電設備の規模や設置場所によって異なります。具体的には以下の通りです。
・10kW未満の住宅用太陽光発電:10年間の固定価格「15円/kWh」
・10kW以上50kW未満の中規模発電設備:屋根に設置する場合「20年間で11.5円/kWh」
・10kW以上50kW未満の中規模発電設備:地面に設置する場合「20年間で10円/kWh」
これらの価格は、経済産業省が定める基準に基づいており、過去の高価格時代と比較すると下がってはいることがわかります。
2025年10月から売電価格が大幅アップ!
太陽光発電の売電価格は年々下がっていることを紹介しましたが、実は2025年度の制度に大きな変化が加わりました。
これにより、初期投資の回収が早まり、導入のハードルが下がると注目されています。以下で詳しくみていきましょう。
屋根活用を後押しする新たな売電制度
2025年度のFIT制度では、屋根設置型の太陽光発電に特化した新たな買取価格スキームが導入されました。
目的は、住宅や工場など既存の屋根スペースを積極的に活用し、太陽光発電のさらなる普及を図ることにあります。
これまで、屋根設置型でも売電価格は年々減少傾向にありましたが、10月からは従来の流れとは一線を画す形で価格が引き上げられます。住宅用や事業用の区分ごとに適用条件が異なり、導入者が恩恵を実感しやすい制度といえるでしょう。
また、今回の制度改正では「買取価格の増額」とともに「買取期間の短縮」が組み合わされているのが特徴です。高単価で短期間の売電を保証することで、初期投資の早期回収を促しつつ、再エネ普及による国民負担の増加を抑制する仕組みが構築されています。
高単価・短期間で導入メリットが拡大
2025年10月以降に太陽光発電設備を設置する場合、住宅用・事業用のどちらにおいても、売電価格が大幅にアップします。
まず、住宅用(10kW未満)では、24円/kWhの売電価格が設定されます。これは従来比で約60%増という大幅な引き上げで、平均的な家庭であれば投資回収期間が4年程度に短縮される見込みです。これにより、これまでコスト面で導入をためらっていた層にも普及が広がると期待されています。
一方、事業用の屋根設置(10kW以上)では、初期5年間に19円/kWhの単価が適用され、前年度と比較して約60%の増額です。事業者にとっても、比較的早い段階での投資回収が見込めるうえ、長期的な売電契約により収益の安定化が図れます。
加えて、FIT制度の特徴である固定価格買取(住宅用は10年、事業用は20年)が維持されているため、市場価格の変動に左右されることなく、計画的に導入が可能です。
また、政府は2030年までに新築住宅の6割に太陽光設置を義務化する方針を掲げており、今回の売電価格の引き上げはその達成に向けた重要なインセンティブと位置付けられています。
さらに、余剰電力を売電しつつ、自家消費による電気代の削減効果も得られる点は、家庭にも企業にも魅力的です。
国民全体の負担にも配慮し、高単価の買取期間を短縮することで、再エネ賦課金の増加を抑制しつつ導入促進を図る、バランスの取れた制度設計がなされています。
太陽光発電の今後は「自家消費」が主流になる?
太陽光発電といえば「売電による収益化」というイメージが根強くありますが、現在では国の方針も変化しつつあります。
特に近年は、家庭内で発電した電力を効率よく使う「自家消費」が注目されており、それに伴って蓄電池やV2Hの導入を後押しする動きが加速しています。そこで以下では、太陽光発電の今後についてみていきましょう。
自家消費型太陽光と補助金の動向
これまでの太陽光発電は「売電収入を得るための投資」という面が強く、自家消費はあくまで副次的なものでした。
しかし現在、国のエネルギー政策は大きく方向転換しており「自家消費」が主軸となりつつあります。
発電した電力を家庭で使い、余った分を家庭用蓄電池にためたり、V2H(Vehicle to Home)を通じて電気自動車(EV)に充電するというスタイルが推奨されているのです。こうした新しい運用スタイルを後押しするため、経済産業省や地方自治体では、高額な補助金制度を用意していることも少なくありません。
特に、家庭用蓄電池やV2H機器の導入に対しては、設置費用の半額以上が補助されるケースも多く、実質的な負担を大きく軽減できます。
このように、これからの太陽光発電は「エネルギーの地産地消」を目指す方向へと進んでおり、補助金制度の活用がカギを握っています。
導入のタイミングが収益性を左右する
太陽光発電システムの導入を検討している方にとって「今導入すべきか、もう少し待つべきか」は悩ましいポイントです。
たしかに、機器の価格は年々下がっている傾向にありますが、それに連動して売電価格も下がってきました。そのため、設置を先送りしても投資対効果が大きく変わるわけではありません。
むしろ、2025年10月からは売電価格が一時的に引き上げられる制度が始まり、住宅用では最初の4年間で24円/kWhが適用されることになります。この期間を活用すれば、収益性を高めることが可能です。結果として、今導入した方が高い費用対効果を享受できる可能性が高いといえるでしょう。
さらに、太陽光発電は長期的な視点で見れば、導入から8〜10年で元が取れる設計になっており、早く始めるほど回収も早くなります。補助金や高単価の売電制度など、利用できる制度があるうちに導入することが、経済的にも賢明な判断といえるでしょう。
投資から暮らしの安心へ!主役は自家消費に
今後の太陽光発電は「投資」ではなく「暮らしのためのエネルギー自給」が主な目的となっていくと考えられます。
家庭内で使う電力の多くを自家発電でまかない、非常時にも蓄電池やEVから電気を供給できる安心感は、金額以上の価値を持っています。とくに、国や自治体からの補助金が充実している今が、自家消費型の太陽光発電システムを導入する絶好のタイミングといえるでしょう。
補助制度には期間や予算に限りがあるため、必要な機器を揃えるのであれば、交付期間中に動き出すことが重要です。エネルギー価格の高騰や災害リスクを見据えて、自宅で安定して電力を使える仕組みを整えておくことは、家計面でも防災面でも大きな意味を持ちます。
これからの時代、太陽光発電は売るためではなく、自分たちの暮らしを守るために選ばれるエネルギーへと変わっていくでしょう。
まとめ
2025年度の売電価格は例年と比較して大きな変化が見られ、特に2025年10月以降の屋根設置型太陽光発電に対する価格引き上げは、これから導入を検討している方にとって追い風となる制度です。また、国の方針としては「売電による収益」よりも、「自家消費による電力の有効活用」が主流となりつつあり、家庭用蓄電池やV2Hの普及を後押しする補助金制度も整っています。今後は、エネルギーの自給自足を意識した賢い選択が求められます。太陽光発電を始めるなら、売電価格の優遇措置と補助制度の両方を活用できる今がチャンスです。